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NUMERO DEUX / Shinichi Ishikawa

作家の部屋で。

もう、8月も終わるのか!?7月に企画協力した
渋谷俊彦さんの個展について書いてみます。
作家の部屋
招かれたアート
ギャラリーという場は、多くの場合、展示された作品から一歩引いた中立の空気を漂わせている。作家にとっても観客にとっても、そこは確かに作品が置かれる場所であるけれど、同時に作品とは切り離された「別の世界」である。 その関係はどこかドライで、澄ました距離感をまとっている|けれども今回の澁谷俊彦の個展は、まるで彼の私的な「部屋」へと招かれたような体験であった。 ギャラリーの赤い絨毯やクラシックな調度が、そのまま作家の個室へと姿を変え、空間は「展示の場」から「作家の私的気配のある場所」へとしなやかに変容した| 作品に添えられたキャプションも効果的で、そして何よりも渋谷の表現そのものの強度を持った美しさが、個室を感じさせても場を弛緩させることなく、心地よい緊張を生み出していた|観客は、作家がそこに在るときには気軽に声を交わし、彼が不在のときには、ふとその部屋を覗き込んでしまったような親密な感覚に包まれたのではないだろうか|初日を飾った富山惠子によるハープの即興演奏も、特別な彩りというより、むしろ昔からそこにあったかのように自然に溶け込み、空間に馴染んでいた|展示された作品群は新作から過去の軌跡まで、渋谷の作家としてもワーク・ライフを映し出すように多彩で、展示に奥行きを与えていた。それは単なる作品の集積ではなく、作家の時間と生の呼吸を感じさせる構成であった。次の企画は「冬」だろうか。楽しみである。
NUMERO DEUX exhibition
澁谷俊彦 個展 うつろひ
2025 2025.7.27--08.03
ギャラリー&ショップ 馬と獅子
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