嘘つきは誰だ?
- Category:Art / Culture
- Date:2025年01月16日
時折、こう思う。行動や結果とは、ただの余白に積もった残骸のようなものではないか、と|内面こそが自分自身なのだ|JR札幌駅を出て、冬の道を歩く。氷と雪が交じり合った地面を踏みしめながら、一歩一歩。ふと顔を上げれば、道路脇の樹木に灯る白いイルミネーション|その輝きの美しさに、心が浮き立つ人もいれば、かえって沈む人もいるだろう
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|内面の感情は、いつも複雑だ。人の内面がその存在の核である以上、それはどうしようもなく複雑であり続ける。そして、もうひとつの核である記憶と手を取り合いながら、その人の生き方をそっと形づくっていく|人生には、自分ではどうにもならないことが数えきれないほどある。いや、実際にはそのほとんどが、どうにもならないものだ|食べなければならないし、眠らなければならない。お金も必要であり、親族や他者との関わりも避けられない
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|生まれた環境、幼少期や少年期――それらは選びようもなく、ただ記憶となって重なっていく|優羽の作品には、内面の記憶がアートとして発露する、その刹那的なスリルがある|ヴィデオやオブジェの表現はどこまでも現代的でありながら、同時に原始的な力強さを秘めている|それは見る者の心に静かに忍び込み、やがて深く侵入してくる|作品に添えられた言葉には、鋭い批評性が漂い、キャプションを超えた存在感がある。
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夕闇に包まれた時間、真っ黒な外の世界を背景に展示された作品は、ひとたび視線をそらせば、消え去ってしまいそうな儚さを帯びていた|その不思議な「非現実性」を感じるのは、作家が自身のパーソナルなテーマを、内に留めるのではなく、外へ向けて解き放っているからだろう|極めて現実的でありながら、同時に現実を超えた何かを宿すその姿は、私たちの内面の深みをそっと照らしているかのようだった。見に行ってほしい。
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2023年度シンクスクール制作コース最優秀賞受賞記念
優羽 個展「嘘つきな当事者」
会 期:2024年12月21日(土)〜2025年1月19日(日)11:00〜19:00
会 場:眺望ギャラリー「テラス計画」(札幌市中央区北2条西4丁目 赤れんが テラス5階)
主 催:札幌駅前通まちづくり株式会社
共同企画:一般社団法人PROJECTA
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