TGR 審査感想を書いてみる。
- Category:Art / Culture
- Date:2024年12月06日
オフィシャルな発表も終わったので、TGR審査員個人としての私の感想を書かせていただきます。
審査会では審査員は冒頭に3本大賞候補をあげられるのですが、私は自分としては圧倒された2本だけを提案しました。 それが「ファンズワースインベンション」と「声」です。特別賞を差し上げたいと提案したのが「さよなら方舟」です。あと、「ドララ・キュララ」「監獄*ROCK YOU!」についても書いてみます。
「ファンズワースインベンション」(弦巻劇団) 役者が多いにもかかわわらず、語り手がしっかりしていてわかりやすい。脚本が明るく、前向きなエネルギーに満ちていて、勝敗にかかわらず2人の人物の魅力があふれて、それを役者さんらはユーモアも交えて熱意と楽しげな雰囲気を発信していて勝者にも敗者にも拍手喝采をした。人生には「負けても良い」こともいっぱいあるのだ。常に後ろむき思考の僕「人生いいことあるかも」と思わせた力は凄い。ブラウン管時代のTVを模したセットも魅力的で、これを役者がワイワイ動かす姿も良かった。また観たい。
「声」(PANCETTA) 冒頭から、固定概念を壊してくれるパフォーマンスは実に魅力的で、そこからシームレースな進行で、声に関するコメディドラマが続く。だれもがおもしろい、共感できる話である。笑いの中にも、気持ちの深い部分をゆさぶる魅力があった。そして、終演。白いキューブが集まり照明があたる。そして、芝居を振り返る「声」だけが鳴り響くステージ。始まりと終わりの完璧な美意識にやられました。フライヤーのアートディレクションもベストです!来年も来てください。
「さよなら方舟」(劇団動物園) どこにもいそう(ではなくいる!)人物たちが、さまざまな「生きる性」について、語り、悩んでいく一晩のドラマ。テーマ自体は非常にシリアスだが、それでもみんなどこか「折り合い」をつけて生きないと人生は続かないと共感できる。北見の劇団さんですが、授賞式に来られていて、直接賞状をお渡しできたのはとっても良かった。北見で観たいなぁ。
あと、個人的に好きな作品を。 「ドララ・キュララ」(劇団・木製ボイジャー14号) もし、神様に僕に舞台を作る才能が与えられたら、本作のようなお芝居を作りたいなぁ、と思いました。日常と非日常はうまくミックスされた、ドタバタ感が凄く好きです。良質のインディ・フィルムのような爽快感がありました。
監獄*ROCK YOU!(大人の事情協議会) TGR2024 一番楽しかった芝居賞です。最初少し脱力してしまいそうな設定なんだけど、そこからディスピア映画のような世界観。セリフのテンポもよく、オリジナリティもある。そしてポジティブなラストは、実におさまりが良く楽しい楽しいお芝居でした。この脚本のうまさと役者の相互効果がお見事でした。