忍者ブログ

NUMERO DEUX / 石川伸一 札幌の文化や芸術

「納谷版~藪の中」〜 一番番やさしい男。

優しかった人〜真実はひとつ客観的なコト。はたしてそうだろうか? 考えてみて。あなたの過去の出来事は、あなたの真実なのは間違いない。しかし、その「真実の記憶」は「本当の真実」だろうか?同じ体験をした他者とイコールだろうか?その保証は誰がしてくれるのか?神か悪魔か?いや人間たちか?
「ジョブキタ北八劇場」のあるビルは、普段あまり馴染みのないエリア。でも、地下鉄さっぽろ駅 15番出口より徒歩1分と聞いて驚くアクセスの良さ。これからの積雪シーズンでも凄く行きやすい場所。
同ビルには、スターバックスや、ごまそば八雲などがあり観劇前後の飲食になかなか便利。エントランスすぐに気軽に待ち合わせできそうな座れる場所もあるのもいい。札幌の観劇の新しいスタイルを提案しているようで楽しい。劇場自体もホテルの施設のような雰囲気がある。
本作のあらすじは、居酒屋のようなお店での常連たちのワイワイ楽しい記念会の後、そこに参加していたひとりが失踪し亡くなる。その真相をめぐってさまざまな「証言」がされるが、そこに現れる複数?の事実。真実とは?ミステリー・サスペンスな内容になっている。
はじまりは居酒屋のようなお店の中で、常連たちの誰もが聞いたことのある「飲み会の会話」が客席にも伝わる。「あるある」な楽しげな会話が重なっていく。これは観客も世界に入りやすいし、登場人物のいい紹介のシーンにもなっている。そこから、事件後はスーッと彼らの内心に踏み込んで「探偵もの」のような内容になり、サスペンスの楽しみが出てくる。このコントラストは美しい。
その美しさを支える役者さんらは大変安定感がある演技をみせる。発声の聞きやすさ、全身の演技も発声と同時にモデルの構図のように決まっていて、役者さんとは凄いものだなぁ、と感心する。それぞれの立ち位置での姿が、絵として決まってるのだ。観客はどの人物の眺めても心情を読み取る楽しみがある。
先に「探偵もの」と書いたが、本作は犯人とか、善・悪のような単純な2次元を描いたものではないと思う。人間の誰もが持つ不確実性・不安定さの多次元さを描いたものだと感じた。
最終的には、そんな不安定な人間たち(=私たち)に対する脚本・演出家による優しい視線。愛情や優しさのメッセージを感じる。それがいい。そうでないと私たちは生きられないよね。そうそう、フライヤーかっこいい!
演劇はまちをつくる。
★本公演は12月中ほぼ毎日昼・夕方公演があるので、オフの日中や、仕事後に行って見て欲しい。
「納谷版~藪の中」
脚本/演出:納谷真大|原作:芥川龍之介
【前期】11月29日(土)〜12月7日(日)
【後期】12月24日(水)〜12月28日(日)(全20ステージ)
上映 時間帯については、以下のサイトで確認願います。
一般:5,000円|U-25:2,000円|中学生以下:1,000円
ジョブキタ北八劇場(北8西1)
(地下鉄さっぽろ駅 15番出口から1分)
PR